小動神社 庚申塔 ショケラ

寒川町内には小動神社含め、3基のショケラ持ち青面金剛庚申塔が確認されています。
→[寒川町 庚申塔 一覧(場所別)] [寒川町 庚申塔 ショケラ(年代別)]

寒川町小動神社庚申塔青面金剛ショケラ
寒川町小動神社庚申塔青面金剛ショケラ

写真は、小動神社の庚申塔{天保10年(1839)}です。
左手で掴んでいるものについて、「赤子」という説{寒川町史(資料1)}や「ショケラ」という説{海老名の庚申塔(資料2)、広報もりよし(資料3)}があります。


合掌しているところや体形を見ると、ショケラのような気がします。
「ショケラは人間を罹病させることを始めとし、さまざまな悪いことをするものである。そこで庚申さんが、それがあばれださないように、頭髪をつかんでおさえているのである。」という説{ショケラの語源(資料4)}も納得できます。

埼玉県春日部市崇蓮寺木造青面金剛像ショケラ
埼玉県春日部市崇蓮寺木造青面金剛像ショケラ

埼玉県春日部市崇蓮寺(そうれんじ)の木造青面金剛像(もくぞうしょうめんこんごうぞう)を見ると、青面金剛が掴んでいるものの姿が一層はっきりします。

{寛文7年(1667)}

 

[出典]

文化遺産オンライン 春日部市指定文化財

http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/205448/2

 

 

小動神社庚申塔の特徴

六所神社の庚申塔
[図の出典] 市川市須和田六所神社の庚申塔 https://jinjamemo.com/archives/simousafuchurokushojinja.html

全国の青面金剛像を見ると多くが六臂で、二臂は少ないようです。
ショケラ持ちの青面金剛庚申塔は比較的少ないようです。
従って、二臂でショケラ持ちの青面金剛庚申塔は少ないと思われます。

1800年代の庚申塔青面金剛像で二臂でショケラ持ちは、他に、例えば、市川市須和田六所神社の庚申塔青面金剛{文化9年(1812)}(写真)があります。この像との共通点は、右手に剣を持っていることです。

 

[参考資料]

資料1:「寒川町史11 別編 美術工芸」 p453

 

資料2:「海老名の庚申塔」 篠崎信 海老名市教育委員会生涯学習課発行 平成8年3月22日 p6

 

資料3:「広報もりよし第303号(昭和58年2月15日)」 p4

http://www.city.kitaakita.akita.jp/kouhou/old_4chou/moriyoshi/files/1983/303.pdf

{秋田県森吉町(もりよしまち)→現北秋田市}

[広報もりよし 昭和58年2月15日(火) 抜粋]
秋田県森吉町(現北秋田市) 深渡 稲荷神社 庚申塔 青面金剛像 六臂 享和元年(1801)
左下の手に裸で合掌した女の髪の毛をつかんでぶらさげている。
これは「ショケラ」と称する。
これは仏教用語の「障碍」(しょうげ)からでたもので、障碍等(しょうげら)がなまってショケラになったものである。
ある地方ではショケラは人間を病気にしたり、さまざまな悪いことをするものだから、庚申さんはそれがあばれださないように、髪の毛をつかんでおさえている。
なぜ、いつから半裸の女人像をショケラと云うようになったか、わからない。
[出典]窪徳忠 1956.11「庚申信仰」山川出版社

「障碍」(しょうげ):
仏語。ものごとの発生、持続などにあたってさまたげになること。転じて悪魔、怨霊などが邪魔をすること。さわり。障害。(日本国語大辞典)

資料4: 画集 ショケラの正体>ショケラの語源
http://koktok.web.fc2.com/070sekib_map/big_syasin/zuzou/ga2B.htm

上記サイトから抜粋↓

窪徳忠 「庚申信仰の研究」S36(1980復刻)>徹夜と就寝時の呪言

古くこの地方(福井県三方郡美浜町麻生)で、庚申の晩には徹夜が原則であったことは、軸を翌朝までかけた儘にしておくことの他に、燈明や線香を一晩中たやしてはいげないという伝えによつて、明らかである。
「お庚申さんは遅くまで起きているのを喜ぶから、徹夜をする」とのべた老人もあった。
けれども、明治10年代にはすでに、早げれぱ10時ごろ、遅くとも12時ころには燈明や線香をけして、就床するようになっていた。
このように徹夜せずに寝る場合には、つぎのような呪言めいた誦言をねる前に床の中で三度誦えなければならないとされている。
その呪言は
「ショケラよ、ショケラ、ねたかと思つてみにきたか、ねたれどねぬぞ、まだ目はねぬぞ」
あるいは
「ショケラよ、ショケラ、身体はねたれど、目はねぬぞ。」
など、家によつて多少の相違がある。
この呪言を誦える理由については、つぎの二説がある。

一説では、「ショケラ」は庚申さんの弟子で、この晩に人々がねるか否かを監視しているので、夜明しをするのがもつともよいが、この呪言を誦えれば、ねてもねないと同様の効果があるといい、他説では、「ショケラ」は人間を罹病させることを始めとし、さまざまな悪いことをするものである。
そこで庚申さんが、それがあばれださないように、頭髪をつかんでおさえているのである。
そうして、この呪言を調えれば、徹夜せずに早く就寝しても、風邪をひいたり、羅病したりしない、というのである。

第二の説から推測されるように、「ショケラ」とは、前述の青面金剛が左の中手で頭髪をつかんで下げている半裸女人像の姿で現わされたものである。
かかる姿で現わした理由、およびこれを「ショケラ」とよびはじめた年代と理由と明らかでないが、実はこの呪言とそれまつわる伝承とは、日華の庚申信仰の関係を考える上において、後述のようたきわめて重要な意義と価値をもっているのである。

2019.11.29 更新